恋する豚研究所がおいしい肉を作っています
このブログは地域活動や他業種のことを書くことが多いのですが、今回も先月の続きのような感じです。
一昨日、園長会恒例の管外視察研修に行ってきました。今年は日帰り研修なので近場の「杜の家なりた」という高齢者施設を主とする複合施設です。この法人の取り組みは武者小路実篤の「新しき村」ではありませんが、なんというか北欧の福祉国家のような福祉村だな、という感じを受けました。千葉、埼玉に6施設を展開する法人ですが、理事長も施設長も若くすばらしいバイタリティを持っています。
まず、「多世代が交流することで生まれるケア」として0歳児から100歳超えのひとまで多様な世代が集う場所にしています。普通はこういう目標を掲げてもなかなか人が来ないのが現状ですが、のんびりした広い空間ときれいな施設と土地柄で、近所からパン屋さん、靴屋さん、飲み屋やガソリンスタンドのおじさん、「寺子屋」と銘打ちながら実際はおしゃべりにくる子どもや高校生といった幅広い世代が集まるのです。これを「共生型福祉拠点」として地域を巻き込んでいるようです。
ひとをつないでいる1つは「食」です。食材提供者、ごはんをつくるボランティア、食べに来るのは団地の高齢者や、子ども、大人とさまざまで、食堂の中では利用者やスタッフの方が少ないことすらあるそうです。こうやってひとが集まりやすいのも、施設が「いかにも高齢者施設」というイメージがない建物であり、意図的に作られているからです。施設長の在田さんによれば「施設での生活をいかに今までの生活に近づけるか」だそうです。長時間保育をする保育園が家のようにくつろげる空間を設けたりするのと同じで、利用者が家から家具を持ち込んだり、家で使っていたお茶碗を持って来たりという細かな配慮があるのです。
この法人は「組み合わせの妙」を人と人をつなぐために工夫しています。例えば「薪プロジェクト」。田舎なので周囲には樹木がいっぱい。しかし、この人工林は適度な間伐、下刈りをしないと森が荒れるそうです。そこで障がい者の方の力を借りて伐採してストーブ用やキャンプ用の薪として販売しているのです。たき火とか暖炉の火って不思議と人を集めて楽しい会話が静かに生まれるものです。他にも「恋する豚研究所」と名付けたプロジェクトがあり、障がい者雇用のために養豚業者と協力してハム・ソーセージの製造販売も行っています。障がいのある方の収入を少しでも上げようという目標からは始まったものです。
寺子屋は24時間365日開いているとか、高齢者のデイサービスに近くの高校の野球部の高校生が下宿したりと東京では実現できないことも多いのですが、何より施設長はじめ職員が若熱い思いで未来を作ろうとしている姿に感動しました。そして心強く思いました。 園長 田中 裕