時代考―いつの時代に生きようか
あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
2017年が始まりました、もう平成も29年めになるんですね。平成元年が始まった日が昨日のことのように思い起こされます。
昭和という時代は激動の時代と言われましたが、平成もテクノロジーの進歩によるもっと複雑に入り組んだ混沌の時代と言えます。日本は70年以上戦争をしていない平和な国ですが、世界では紛争が絶えず国家間の争いだけでなく、テロという無差別の殺戮があちこちで起こる恐ろしい時代です。物事の両極化が進み、白か黒か、0か100かみたいな考え方が横行していくのを見ると本当に空恐ろしくなります。価値観というものはグレーゾーンがあって成り立つものであり、だからこそ人間の多様性が存在するのです。
時代を考えたときに、新聞のアンケートで生まれたくない時代のトップが戦国時代でした。戦乱の世に生きる過酷な人生は送りたくないというのは当然の思いです。ところが、学校の授業やテレビドラマで人気なのは戦国時代です。ある意味、フィクションのように客観的に見つめるぶんには血沸き肉躍るということでしょうか。作家で中尊寺の住職でもあった今東光さんは明治、大正、昭和では大正が一番いい時代だったと言っていましたが、最近では江戸時代の良さも評価されていますし、時代によってその面白さは様々ですね。
ひところ昭和30年代を舞台にした映画が流行りましたが、私も昭和40年代の自分の少年時代を回顧して原稿にしたことがあります。友達の家や野原で日が暮れるまで遊んでいたり、漫画やテレビに夢中になったりと楽しい時代でした。でも「今、その時代に戻れと言われたら・・・やだろうね(笑)」と結んでいるので、きっと現代から見るとノスタルジアを感じてもそれは文化だったり、その年齢特有のわくわく感だったりして、現在を生きる人間としてはやはり「今」が大切だし、生きがいを感じるところではないかと思います。宮崎駿さんが地震等で今の世の中が一回リセットされるといい、と半ば冗談で語っているのは有名な話です。その気持ちはなんとなくわかるような気もしますが、どの時代にも課題があり人間がその中で必死に生きていることは歴史からだけでなく今を見つめることで痛感します。 園長 田中 裕