台東区のすばらしい「ちいさな芽」
さきほど巨大なスカイツリーが間近に見える台東区に行ってきました。台東区は平成22年から「ちいさな芽」という3~5歳幼児教育共通カリキュラムを策定実施しています。私は全く知りませんでしたが、これは大変すばらしい考え方からつくられたものです。台東区の0歳から15歳までが同じ教育保育をという、教育長の発案で区内の公私立の保育園、幼稚園、こども園が一つの理念の下に、膨大なカリキュラムを作ったのです。台東区教育委員会台東区立教育支援館の統括指導主事の方をはじめ、「ちいさな芽」の作成にかかわった元幼稚園園長、元保育園園長の話を伺いましたが、
すごいのは、カリキュラム策定作業に幼・保・こども関係者はもちろん、教育委員会、小中学校の校長、PTAなど区の関係者が大同団結して作ったことです。最初の策定は、年長児の10月から小学1年の1学期までのカリキュラム。次に3~5歳児の共通カリキュラムという段階で作られたようで、実際に保・幼と小学校の連携が行われています。もちろん、板橋区でも保幼小中連携ということはうたわれていますが、小学校の先生の保育園見学や体験というのはまだなかなかすすんでいません。あったとしても園と学校の単体のつながりになっているのが現状でしょう。
それが組織だって取り組まれているのは理想的な子育て行政ではないでしょうか。小1ギャップ、中1ギャップといわれながら不登校の子どもが増えていることはマスコミで報道されています。自分が私学の教員だったのであまり言いたくありませんが、学校の現場は先生によっていろいろなことが異なるとか、いい先生なのに異動してしまうなど昔から変わらぬ保護者の感想を聞くと、なぜもっと組織的な構造ができないのかと思っていました。もちろん、先生方がロボットのように機械的な教育をしろというのでなく、目指すべき方向と、大切にする理念のもとに一貫した0歳から15歳までの教育、保育を目指すことが大事なわけです。
この「ちいさな芽」は基礎編と実践編に分かれています。基礎編は教育・保育に対しての考え方が網羅されており、実践編は保育の具体的なカリキュラムが盛り込んであるので、若い保育士、教諭にとっては絶好の教科書といえます。区では実践推進訪問と呼ぶ、このカリキュラムの取り組みの巡回があり、具体的なアドバイスや提案もしてくれるようです。
幼稚園と保育園では生活スタイル、保護者のスタンスも全く違いますし、公立と私立でも考え方や取り組みに大きな差異があるものですが、それを超えて一つのカリキュラムを完成させ、さらに各園の独自性も担保しているというのは、ぜひ他区、他市も取り入れてほしいシステムです。今日の取材は、東京都社会福祉協議会保育部会広報委員会の仕事でしたが、今年の広報誌のテーマは「10年後を見据えた保育の未来計画」となっています(自分でつけたんですが・・・)。10年後には東京中の保育園、幼稚園、こども園、小学校、中学校がこういうカリキュラムの下に連携して21世紀を担う子どもたちを育てていけたらいいですね。 園長 田中 裕